研究員レポート

「世界平和・世界経済好況こそ新興国通貨が上昇しやすい環境」FX高金利通貨レポート

【ランド/円ファンダメンタルズ 利上げ期待、緊縮予算、ウクライナ】
南アフリカの1月消費者物価指数(CPI)は前年比+5.7%となり、前年12月の+5.9%からやや鈍化したものの、南ア中銀(SARB)のインフレ目標(3-6%)の上限近くで高止まりした。このため、SARBは緩やかな引締め姿勢を維持する公算が大きい。また、南ア政府は2月に発表した2022/2023年度予算案で、歳入増を見込みつつ歳出抑制の方針を堅持。財政赤字の国内総生産(GDP)比の見通しを7.8%から5.7%に引き下げた。ロシアのウクライナ侵攻で市場心理が悪化した事は南アランドにとってマイナス要素だが、ウクライナ危機の影響で資源価格が上昇した事は資源輸出国通貨であるランドのプラス要素である。


【ランド/円テクニカル 戻り試しの局面も過大な期待はかけづらい】
2月後半に、20日移動平均線と100日移動平均線を割り込んで下落したが、200日移動平均線が下値支持となり持ち直した。3月に入ると100日移動平均線、20日移動平均線を回復しており、戻り試しの局面に入っている。2月後半の急落前の水準である7.7円台前半を回復できるかが焦点となりそうだ。もっとも、20日移動平均線は上向きだが100日移動平均線と200日移動平均線が下向きのため、過大な上昇期待はかけづらい局面でもあろう。

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【ランド/円注目ポイント CPI 、SARB、スタグフレーション】
3月23日に次回のSARB理事会が行われる。市場の見方はまだ固まっていないが、25bp(0.25%ポイント)の追加利上げが決まる公算が大きい。前述のとおりインフレ率が高止まりしており、2月以降は資源高の影響で再び加速する可能性もある事から、SARBは引締めに動かざるを得ないだろう。なお、23日にはSARBの前に南ア2月CPIが発表される。そのほか、引き続きウクライナ情勢にも注目。情勢の緊迫化により原油などのエネルギー価格が高騰している。資源高はランドにプラスの面もあるが、足元では世界的なスタグフレーション(物価高と不況の同時進行)への懸念を高めつつある事から、ランドに対するマイナスイメージにも発展しかねない。世界が平和で好況という環境でこそ上昇しやすい新興国通貨にとって、足元の情勢は良好とは言えないだろう。