研究員レポート

「下落基調継続 ウクライナリスク緩和なら反発も金融政策への不信が重しに」FX高金利通貨レポート

【トルコリラ/円ファンダメンタルズ ウクライナ危機が試練に】
トルコの2月消費者物価指数(CPI)は前年比+54.44%へ上昇。同生産者物価指数(PPI)に至っては前年比+105.01%に加速した。ウクライナ危機の影響で原油価格が高騰しており、トルコのインフレはさらに加速する公算が大きい。こうしたインフレ高進にもかかわらず金融引き締めをタブー視する中銀の姿勢と、当局によるリラ買い介で外貨準備が減少している状況を踏まえると、リラ相場の上がり目は薄いと言わざるを得ない。ウクライナ情勢の緊迫化はエネルギーを輸入に頼るトルコ経済にとってインフレ高進だけではなく貿易収支の悪化と、ひいては経常収支の悪化を招く悪材料だ。1月の経常収支は赤字額が2017年以来の71.1億ドルに膨らんだ。また、トルコにとって「上得意客」であるロシアとウクライナからの観光客が急減すると見られ、観光収入の減少にも繋がることになろう。ロシアとウクライナの戦争が長引けばこうした悪影響はさらに大きくなると考えられるため注意が必要だろう。

【トルコリラ/円テクニカル 下落基調は継続中】
2022年に入り下げ止まりの兆しも見られたが、2月後半からはウクライナ情勢の緊迫化を受けて下落圧力がかかっている。100日移動平均線は急角度での低下が継続中。3月に入り20日移動平均線が再び下向きに転じている。5日移動平均線は横ばいからじわりと上向きだが、依然として20日移動平均線を下回る水準にある。こうした点から下落基調は継続中と判断。もう一段の下値模索の動きが強まる可能性も否定はできない。5日移動平均線と20日移動平均線がともに上向きとなり、5日移動平均線が20日移動平均線を下から貫くミニ・ゴールデンクロスを示現しない限り、下落トレンドが終了したとのシグナルにはならないだろう。

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【トルコリラ/円注目ポイント 政策金利、ウクライナ情勢】
トルコ中銀は17日に政策金利を発表する。インフレ率が50%を超えており、近い将来には70%台に達するとの見方があるにもかかわらず、中銀は政策金利を14.00%に据え置く見通し。金融政策に絶大な影響を持つエルドアン大統領が「金利(利上げ)はもはや議題ではない」との認識を示している事からも利上げの目はまずなさそうだ。そうした中、中銀が「甘い」インフレ見通しを示し、頑なに利上げを拒む姿勢を打ち出すようだとリラは下落する可能性があろう。ロシアとウクライナの停戦交渉に進展があればリラはひとまず反発すると見られるが、原油などのエネルギー価格が大幅に反落しない限り上昇は続かないだろう。金融政策を巡る不透明感・不信感がリラの上値を抑える展開が続きやすいと見る。