研究員レポート

「米2月雇用統計は冴えない結果に。米国の労働市場が軟化しつつある懸念強まる」米2月雇用統計レビュー

米労働省が2025年3月7日に発表した2月雇用統計の主な結果は、①非農業部門雇用者数15.1万人増、②失業率4.1%、③平均時給35.93ドル(前月比+0.3%、前年比+4.0%)という内容であった。

①非農業部門雇用者数
2月の非農業部門雇用者数は前月比15.1万人増と市場予想の16.0万人増を下回ったが、前月の修正値(12.5万人増)から伸びが拡大した。医療関連や金融などで雇用が増加した一方、連邦政府や小売りなどで減少が見られた。イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」が職員の削減を打ち出していることから、連邦政府の雇用者は次回以降も減少が続くと見られている。なお、前2カ月分の修正を加味した3カ月平均の雇用者数の増加幅は23.6万人から20.0万人へと縮小した。

②失業率
2月の失業率は4.1%と前月の4.0%から上昇。市場予想は4.0%だった。フルタイムの職を希望しながらパート就業している人などを含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は8.0%と前月の7.5%から上昇。2021年10月以来の高水準を記録した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が2023年1月以来の62.4%へ低下したにもかかわらず失業率が上昇した点と合わせて、質的な雇用の悪化を意識させる結果となった。

③平均時給
2月の平均時給は35.93ドルと前月の修正値35.83ドルから0.10ドル増加し、過去最高を更新した。伸び率は前月比+0.3%で市場予想通りだったが、前年比で+4.0%と市場予想(+4.1%)を下回る伸びとなった。ただし、賃金の伸びは底堅さを維持しており、米国のインフレが鈍化しにくい要因のひとつになっているようだ。

④まとめ
米2月雇用統計の発表を受けて米国株は下落。米国債が買われ(長期金利は低下)、ドルは売られた。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が「米国経済は良好な状態にある」とした上で、利下げを急がない姿勢を強調したことで株価、長期金利、ドルはいずれも動きが反転した。なお、米2月雇用統計は表面的な数字こそ大きく悪化しなかったが、米国の労働市場が軟化しつつあるとの懸念を強める内容であった。政府効率化省(DOGE)による連邦政府職員削減の影響は2月の時点では大きくなかったが、そのぶん3月以降の非農業部門雇用者数を押し下げる可能性が高いとの見方が強まった。また、不完全雇用率(U-6失業率)の急上昇は、フルタイムの仕事を失った労働者がパートタイムに流れたことを物語る結果となった。もっとも、悪天候により就労ができなかった人が40.4万人と、2月としては過去4年で最多となったことも報告されており、天候要因が2月雇用統計の冴えない結果につながった可能性も否定はできない。いずれにしても、4月4日に発表される次回3月雇用統計が大いに注目されることになりそうだ。