研究員レポート

「2月の平均時給は34.57ドルで過去最高を更新」米2月雇用統計レビュー

米労働省が2024年3月8日に発表した2月雇用統計の主な結果は、①非農業部門雇用者数27.5万人増、②失業率3.9%、③平均時給34.57ドル(前月比+0.1%、前年比+4.3%)という内容であった。

①非農業部門雇用者数
2月の非農業部門雇用者数(季節調整済)は前月比27.5万人増と市場予想の20.0万人増を上回った。ただ、前月分が35.3万人増から22.9万人増へ、前々月分が33.3万人増から29.0万人増へとそれぞれ下方修正された。この結果、雇用情勢の基調を判断する上で重要視される3カ月平均の増加幅は26.5万人となった。

②失業率
2月の失業率(季節調整済)は3.9%と、前月の3.7%から0.2ポイント悪化した。市場は前月から横ばいの3.7%を見込んでいたが、予想に反して2022年1月以来の水準に上昇した。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も前月の7.2%から7.3%へとやや上昇した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月から横ばいの62.5%だった。

③平均時給
2月の平均時給(季節調整済、全従業員)は34.57ドルと前月の修正値34.52ドルから0.05ドル増加した。伸び率は前月比+0.1%、前年比+4.3%。市場予想は前月比+0.2%、前年比+4.3%だった。なお、平均時給は35カ月連続で過去最高を更新したが、前月比の伸び率は2年ぶりの低さとなった。

④まとめ
今回の米2月雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を上回る増加幅となった一方、失業率は予想外に悪化し、平均時給は概ね予想通りの伸びだった。いわばマチマチの結果で、ドルは発表直後に乱高下したが、最終的には米長期金利が低下したためドルも下落して取引を終えた。なお、前月2月にドル高・円安が進んだのは、前回の米1月雇用統計(2月2日発表)で非農業部門雇用者数が大幅に増加したことがきっかけだった。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが後ずれするとの観測を強めるきっかけとなった1月の非農業部門雇用者数が、今回大幅に下方修正されたことが米長期金利の低下とドルの下落に繋がったと考えられる。市場はFRBが6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを開始するとの見方を強めつつあるが、6月11-12日FOMCはまだ3会合も先であり、6月FOMCまでには雇用統計もあと3回発表される。FRBの利下げに関する市場の見方は、この先も大きく揺れ動くと予想されることから、ドルについても当面は不安定な値動きが続きやすいと考えられる。