研究員レポート

「失業率は5.9%、平均時給は過去最高を更新」米6月雇用統計レビュー

米労働省が2021年7月2日に発表した6月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数85.0万人増、(2)失業率5.9%、(3)平均時給30.40ドル(前月比+0.3%、前年比+3.6%)という内容であった。

(1)非農業部門雇用者数
6月の米非農業部門雇用者数は前月比85.0万人増と、前月の58.3万人増(55.9万人増から上方修正)から伸びが加速。市場予想(72.0万人増)も上回った。業種別ではレジャー・サービスの増加が目立っており、34.3万人増と全体の4割超を占めた。雇用情勢を基調的に見る上で重視される3カ月平均の増加幅は56.7万人と、堅調ながらも伸びは緩やかだった。

(2)失業率
6月の米失業率は5.9%と市場予想(5.6%)に反して、前月から0.1ポイント悪化。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が前月から横ばいの61.6%であったにもかかわらず失業率が上昇したのは腑に落ちないが、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は9.8%と、前月から0.4ポイント改善した。

(3)平均時給
6月の米平均時給は30.40ドルと、前月から0.10ドル増加して過去最高を更新。比較的低賃金の業種で雇用者が増加した影響から、前月比の伸び率は0.3%とやや鈍化した一方、前年比ではベース効果(比較対象の前年6月の平均時給が低かった影響)もあって+3.6%と加速した。伸び率は、前月比、前年比ともに予想通りだった。

(4)総括
米連邦準備制度理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和の段階的な縮小)の議論開始を視野に入れる中、注目された米6月雇用統計は総じて堅調内容だったが、失業率の上昇など回復の鈍さを窺わせる部分も見られた。これに対して市場は、米国の3連休を控えていたこともあってややネガティブな反応を示した。雇用統計発表後のドルは対円で一時111円台を割り込んで下落し、米国債は幅広い年限で上昇(利回りは低下)。一方で、米国株は主要3指数がそろって高値を更新した。

こうした動きを踏まえると、市場は米6月雇用統計について、FRBのテーパリング議論を加速させる内容ではないと評価したようだ。とはいえ、テーパリングの議論を後退させる弱い内容ではないことも確かであろう。市場の関心は、7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録や、14日に米議会で予定されている金融政策と経済に関する公聴会にシフトすることになりそうだ。