「労働参加率の低下は予想外だが、FRBの更なる利上げの可能性が高まる」米4月雇用統計レビュー
米労働省が2022年5月6日に発表した4月雇用統計の主な結果は、①非農業部門雇用者数42.8万人増、②失業率3.6%、③平均時給31.85ドル(前月比+0.3%、前年比+5.5%)という内容であった。
①非農業部門雇用者数
4月の非農業部門雇用者数は前月比42.8万人増と市場予想の38.0万人増を上回った。業種別では、引き続きレジャー・接客の増加が目立ち全体をけん引。製造業などでも幅広く雇用が増加した。3月分は42.8万人増へ、2月分も71.4万人増にそれぞれ下方修正された。このため、雇用情勢を基調的に見る上で重視される3カ月平均の増加幅は52.9万人となり、前月時点の54.9万人から伸びがいくぶん鈍化した。
②失業率
4月の失業率は3月から横ばいの3.6%となり、市場予想の3.5%を上回った。フルタイムの職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は、7.0%と3月から0.1ポイント上昇した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は62.2%へと0.2ポイント低下した。市場は62.5%への上昇を予想していたが、労働市場からの退出者が予想以上に増加した。
③平均時給
4月の平均時給は31.85ドルで、伸び率は前月比+0.3%、前年比+5.5%と、おおむね予想(+0.4%、+5.5%)通りであった。3月の+0.5%、+5.6%からやや鈍化したが、前年比の伸びは高水準での推移が続いた。人手不足による賃金上昇圧力は加速こそしなかったが高止まりしている。
④総括
今回の米4月雇用統計は、米連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な引締め策を正当化する内容と言えるだろう。労働参加率の低下は予想外であったが、労働市場への参加者が減少したことは、企業の採用活動を困難にするため賃金の上昇要因になり得る。景気の過熱を予防するためにもFRBは6月以降も利上げを行う可能性が高まったと判断できる。FRBとしては、現在0.75%~1.00%の政策金利を早めに中立水準(景気を過熱させず冷ましもしない均衡水準で、現状は2.50%程度と推定されている)まで引き上げたい意向だ。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも50bpの追加利上げに動く公算が大きい。75bpの大幅利上げの可能性も排除できないだろう。そうした見方に沿って米国債利回りは4月雇用統計後に上昇した。米国株は米国債利回りの上昇を嫌気して下落。米ドルは対円ではやや強含んだが対ユーロでは下落するなどマチマチの動きだった。